『田園の詩』NO.34  「野球留学」 (1995.10.31)



 甲子園での夏の全国大会も終わり、高校野球は新しいチームに生まれ変わり、また
次の目標に向かってスタートしたようです。九州大会をめざしての大分県大会も行わ
れて、二校の出場が決まりました。

 若者の間では、野球よりもサッカーやバスケットに人気が出てきたとはいえ、高校
野球に関しては、まだまだ根強いファンが多いようです。日本国中どこでも同じだと
思いますが、とくに地元の高校が出場することにでもなれば、市や町をあげての
応援体制や後援会づくりが行われます。

 わが町の隣の宇佐市のY高校は、三年間の在校中に、一度は必ず甲子園に出場
できるくらいの野球の強い高校です。甲子園に出るたびに地元は沸くのですが、陰で、
「あんなよそ者ばかりのチームなんか、わしは応援せん」というオジサンもいます。
市議会議員の間にも、「地元の選手のほとんどいない高校の野球部に、市から多額
の支援金を出すのはいかがなものか」といった意見があるようです。

 高校野球のそういった事情に疎い私ですが、聞いてみると、九州各地のみならず
遠くは関西からも選手が集まってきているとのことです。レギュラー争いも大変で、
地元から選手になれるのは、ごく少ないのです。ですから、さきのような陰口や意見
も出てくるのでしょう。


      
    隣の宇佐市にある国宝・宇佐神宮の本殿です。宇佐八幡ともいわれ、全国の八幡宮の
     総本社でもあります。神仏習合・神輿の発祥地ともいわれています。 (08.8.1写)



 しかし、地域おこしで頑張っている若者たちの意見は違います。

 「一日でも訪れてくれる観光客だって、わが町を知ってもらえる大切なお客さん。
 それが、たとえ野球留学とはいえ、青年期に三年間も、この町に住んでくれるのだ。
 彼らを温かく迎え、大きな声援を送ろうではないか。そしたら、この町の人情が
 きっと彼らに伝わり、一生の間、よい思い出としてこの町が心に残るだろう。もし
 かしたら、わが町の宣伝マンになってくれるかもしれない・・」

 自分たちの地域を輝かせようと地道に活動している若者たちの方が、かえって心が
広く、地域エゴにとらわれていないのです。          (住職・筆工)

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